がん種において炎症所見と予後(病気の経過)の相関が知られているNLR(好中球/リンパ球比率)。NLRの上昇は多くの場合、好中球の増加に相対してリンパ球の低下を伴っています。特にがん患者において、NLRの上昇は悪性腫瘍に対する免疫抑制性の環境が形成されることによる炎症と関連が深く、予後の悪化と関係があるとされています。
好中球はがん細胞の増殖や浸潤を誘導するリガンド(生体分子と複合体を形成して生物学的な目的を果たす物質)や血管新生(血管から枝分かれして新たな血管を作る生理現象)を誘導するサイトカイン(生理活性物質)の産生に重要な役割を担っているため、好中球の増加はがんの増大と転移を促進します。
一方、リンパ球は人体の免疫機能をつかさどっており,リンパ球減少は人体の抗がん免疫を障害し、予後の悪化を反映します。従ってNLRはがん促進環境と抗がん免疫状態のバランスを反映していると考えられます。
「先進的がん予後予防」
がん治療後の経過観察を間歇に3ケ月~6ヶ月置きに検診を行うのが通常とされています。一見なくなったように見えることを懸念して定期的検診を行われています。がん種やステージによって再発の危険性は異なることも承知ではありますが検査結果を聞くまでは不安や心配は大きいと思います。
「がんサバイバーメディカル支援」は、がん一次~三次予防において月1回のNLR測定を勧めています。その目的として、がんの動向が早く予測できたら治療対応のイニシアチブが早くできる得点を活かせます。それには、NLRはがん細胞を攻撃するT細胞の働きを活性化させる薬である、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療や抗がん剤などの反応予測因子として研究が進んでいるからです。
ICIは、がん細胞への免疫での攻撃がブレーキされている状態を解錠するだけであって、がん攻撃には身体に備わっている免疫細胞が要であることか、免疫機能が弱っていている場合、免疫細胞ががん細胞へ攻撃する力には限界が生まれます。言えることは、NLRが高値になればなるほど、好中球が増加し、がん細胞を攻撃するリンパ球が少なくなっていく状態を表わしていることから、高値への変動を早く知ることで治療には都合が良いといえます。
「先進的NLR自己検体測定」
自己採血を行い、自らが中心になってNLR測定することを指しています。自らが臨床検査技師の指導を受けて教わり、方法がマスターできたら独自に測定して先進的に自らのがん予防や治療推進に役立てます。自己測定が無理な場合は臨床検査技師の手を借りてNLRを事無く測定します。
自己指頭採血のやり方を分かりやすく説明
自己採血の説明や必要な物品は全て準備しますので安心して採血してください。
自己採血にあたり注意と確認事項をお話します。
1)指さきをアルコール綿で消毒します。
2)採血部位を定めて、採血器具を指に置き、スイッチを押します。
3)最初の血液は拭き取り、2滴めの血液を2本の専用毛細管に採血します。
4)採血後に絆創膏で止血して修了します。
採血していただいた血液を直ちに検査に取り掛かります。
検査の手順は、血液で標本を作り ➨ 標本を染色 ➨ 顕微鏡で数えます ➨ NLR値 という流れになります。
血球は、からだの全臓器組織と密接な関係を有し、各種の刺激によって最も影響を受けやすい細胞成分であって、その変化は疾病の全像を総括的に鋭敏に指示するものです。血球を眺め、現状のがん予防、生活質(QOL)、モチベーション、ストレスなどを帰り見られるのも良いのではないでしょうか。対話を通じて色いろとお話したく思います。